No.8 好きなことを仕事にする?しない? 21歳、現在モラトリアム中
“好きなことを仕事するor好きなことは趣味にしておいて仕事にはしない”
働くうえで一度はこの問いを考えた人は多いのではないだろうか。
中家穂乃実(なかいえほのみ)さん(21)は小学6年生の時に、当時住んでいたシドニーでダンスと出会う。そして大学時代にニューヨークのブロードウェイを鑑賞したのをきっかけに、ダンスサークルに入部。去年の公演では舞台演出責任者という役割を全うし、達成感を得たのだが―。あれから半年、大学4年生となった今、見つめる先は自分の進む道。迷いながらも進んでいく就職活動の中で見つけた、“やりたいこと”とは。
「1番好きなものは、職業にしない方がいいかもしれない」
表現することが好きな中家さんは踊ることはもちろん、舞台演出にも興味があり、大学ではダンスサークルに入部する。そこは30年以上の歴史と部員総数300人以上を誇る、国内の大学では最大規模のダンスサークルだった。大学3年次には幹部となり、約1年かけ年末に行う公演のストーリー、振り付け、照明、衣装など全てをゼロから作り上げる。また、総演出も仕切り、舞台美術や照明などからダンサーの微妙な心情を表現した。大人数をまとめるのは大変だったが、ダンスをやりたくてやっている仲間たちだ。皆が同じ方向を向いていたため、本番に向けて団結力は高まり舞台は大成功に終わった。しかしその一方で、中家さんは公演終了後にある感情を抱くようになる。
「1番好きなものは、職業にしない方がいいかもしれない」
舞台演出を職業にしたら辛くなるかもしれないと思ったと言う。アイディアを出すことが義務と感じてしまうと好きなものが苦しくなってしまうのではないか、と想像した結果だった。演出を見てもらっていた先生からは「他の人がやりたいことばかり考えてる」と言われた。
「自信がありませんでした。“伝統”というプレッシャーを感じ、保守的になってしまって...自分の感覚的な意見を、論理的に言語化することが出来ませんでした」
自分の中のアイディアはあった。でもそれを何が何でも通すという気持ちにはなれなかったと振り返る。
それでも表現することを仕事にしたい
演出家は難しくとも、やはり「表現すること」が好きと言う。多々ある職業の中で、中家さんが現在志望しているのは出版関係。特に雑誌編集に興味がある。「とにかく雑誌が好きなんです!」と情熱をもって話してくれた。雑誌には言葉や写真、イラストなどたくさんの要素が織り込まれていて、自分は何が好きで何に心を動かされるのかに敏感になることができる。なんとなく生きていた時に自分の興味を広げてくれたり、自分の頭の中で考えるきっかけを与えてくれたりしたのが雑誌だった。
「カフェに行ったとき、近くに座っていたおじさんが読んでいた雑誌がきっかけで今まで知らなかったアーティストと出会えたり、好きな芸能人が紹介しているカフェの中から自分のお気に入りのお店を見つけたり、そういう“つながっていく”感覚も好きなんです」
Web情報とは違って、雑誌は本棚に並べることが出来て、好きな時に好きなページをめくることができるのも魅力の一つだと言う。もし雑誌編集者になったら街の特集をするのが夢だ。
「街歩きが好きなんです。知らない場所やお店へ行ったり、人に出会えたりすることが楽しくて。今度は仕事として、そこで生まれる感動を“雑誌”という媒体を通して多くの人に伝えることができたら最高だと思っています」
あまり知られていないようなニッチなものや場所などを企画して、作り手の気持ちが伝わる特集を組みたいと言う一方で、マーケティングの重要性も忘れていない。
「やはり読者ありきなので、読んでもらえるためのリサーチやマーケティングも大切だと思います。これから勉強していきたいです」
絵を描くのも好きな中家さん。ノートと鉛筆を持ち歩き、思い立ったら描く。
何枚か見せてくれた。
日常で見つけた面白い情景をイラストに。『お昼寝夫婦』
ファッションも好きで、オシャレだなと思った人はイラストを描いてメモしている。
自分の興味を探求中
表現したいという想いだけではなく、アクションも起こしている。現在、2つのことを実践中だ。ひとつは「What’s your dream?」というプロジェクト。友人と一緒に街中にいる観光客などに声をかけて、彼らの「夢」を聞き、それを画用紙に書いてもらう。そしてそれぞれが「夢」を持った笑顔の写真を撮り溜め、facebookにアップしている。
「他の人の夢を聞けて、自分の知らなかった世界に触れられることがとても楽しい。新しい価値観と出会うと得した気分になります」
もう一つはインターンだ。東京・神保町にあるコワーキングスペースでイベント企画や運営のアシスタントをしている。知り合いから、「色々な人に会った方が良い」というアドバイスを受け、紹介してもらったのがきっかけだ。仕事の1つに、これからの街を考えるプロジェクトに主に関わっている。企画することと、それを実行することとの間にギャップを感じている。思うようにはいかなかと思う一方で、実際に動くことで思いもよらず色々な人が協力してくれるのだそうだ。
「まだまだ課題が多いし、受け身になってしまうことが多いので、これからはもっと能動的に携わっていけたらいいなと思います」
【プロフィール】
座右の品:劇団四季『ライオンキング』
「小学4年生の時に家族で観に行って、舞台で表現することに衝撃を受けました」
生年月日:1993年9月20日 おとめ座 A型
経歴 :小学校→シドニー日本人学校→シドニー語学学校(IEC)→Killara High School
家族 :父、母、姉(26)、姉(23)
趣味 :音楽 邦楽だったら星野 源。洋楽はブルーノ・マーズ。
あとは古いアーティストが好きでスティービー・ワンダーは
お気に入り。
特技 :人の良いところを見つけること
好きなスポット:公園、下北沢
好きな言葉:継続は力なり
尊敬する人:親、やりたいことを仕事にしている人
好きな食べ物:から揚げ♡ 鶏肉が好き♡
嫌いな食べ物:生カキ
好きなタイプ:外や太陽が好きな人!
嫌いなタイプ:否定する人
HP :What’s your dream?
https://www.facebook.com/agunavi?fref=photo
筆者とのつながり:しごとバー「仕事がないナイト」
友人からもらった年賀状。
「七福神にいそうだよね」というメッセージが添えられていた。
上段右から2番目が中家さんだろう。違和感は、全くない。
(執筆:小野 ヒデコ)
<小野ヒデコプロフィール>
おの・ひでこ 1984年生まれ。自動車メーカー、アパレル会社勤務を経て2015年にライターに転身。