「人」という肩書きで生きる

好きな人を取材して、その人の生き様を紹介しています。

No.7 心地のよい場所を見つけるコツ

「ワーク・ライフ・バランス」。

平たくいえば、仕事と家庭、収入と生活、趣味と実益…それらを自分なりにどう折り合いをつけるか、納得させられるかということ。あちこちで議論が重ねられている事柄に、舟之川聖子さん(39)の考えは「(仕事も家庭も)どちらもつらくなるまでやらない。その手前で次のアクション」と小気味よい。

 当然のことながら「アクション」のためにはそれなりの準備も要る。「その手前」の見極めも肝心だ。シームレス、そして自然体に続く彼女の“自分が心地よい居場所の見つけ方”とは-。

 

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週4日仕事、週3日自由

現在、派遣として週4日働いている舟之川さん。2つの会社を週2日ずつ掛け持ちしており、収入はここから得ている。そして、休日は趣味的活動に明け暮れる。映像を観て感想を話し合う「Film Picnic」や、百人一首を本気で楽しむ大人の部活「かるたCafe」、本読み仲間と出会うブッククラブ「白山夜」などのイベントを主催している。

周りから、羨ましいと言われることもあるそうだ。やりたいことやって、自由でいいな、と。舟之川さんの中にはただムクムクと湧き上がるもの、突き動く衝動があるだけだ。ボケーとする時間はない。

「常にCPUが動いている感じです。居心地の良い場所を求めて動き続けています」

また、舟之川さんは1児の母でもある。仕事も趣味も育児もこなすメリハリのある生活。これこそがベストといえるワーク・ライフ・バランス!しかし、このような生き方を彼女が手にするまでには長い道のりがあった。

 

理想と現実のギャップ

 

大学時代は映画に夢中になり、卒業後に上京して映画の専門塾で半年間勉強をした。配給や制作をしたくて映画の興行会社に入社したが、配属は映画館でのバックオフィス業務。

当時1990年代後半はシネコンが台頭しはじめ、ハリウッド映画や子ども向けアニメが大流行の時代。年末年始やGWなどの繁忙期は早朝から夜遅くまで働き、大好きだったはずの映画さえも観る時間がとれなかった。

「思っていた仕事とのギャップがあり過ぎました」

そして入社してから3年半、退職を決意する。

退職後、思い切って姉夫婦が住んでいるドイツへ飛ぶことに。約3か月間を過ごし、語学学校へも通った。語彙を1つひとつ覚えていくことや、少しずつ周りと会話ができるようになるにつれて、小学校の頃に戻ったような新鮮な感覚になっていく。

「人とコミュニケーションとるのって楽しい!」

初めての感情だった。この感情を得たことが舟之川さんの転機となる。

 

周りに声をかけてもらえるワケ

 

帰国後、敢えて派遣社員というポジションを選ぶ。仕事以外の時間を自由に使いたいと思ったからだ。17時で退社した後はドイツ語教室にも通った。

「ドイツにはまた行きたい。まだ行ったことない他のヨーロッパの国へも」

その後、外資コンサルティング会社、助産師団体、人材コンサルティング会社などで働く。「私の中で一貫していることは、自分のやってきたことに意味を感じられるかということです」

転職の際、人材サービス会社を使ったがあまりしっくりこなかったと言う。

「今までのキャリアやスキルのみで転職先を選ぶことに違和感がありました。本当にやりたいことまでマッチングしてもらえないと感じて」

これらの就職のきっかけはほとんど知人を介してだ。ターニングポイントごとに周りから声をかけてもらえているのはなぜだろうか。

それは彼女が常にキョロキョロして、能動的に「こういうことがしたい」「こんな仕事がしたい」ということを周りに伝えたり、facebookなどのSNSも使い自分の気持ちを発信したりしている。だからこそ、「一緒にやってみない?」「一緒にやろう」というめぐり合わせがあるのだ。

 

 

生きたい道がある。進みたい方向がある。

 

本当にやりたいこと―それは “舟之川個人”が役に立ちたいということだった。人とコミュニケーションをとっていく中でそのことに気づいていった。

「その人の人生に影響を与えるような仕事をしたいと思うようになりました。仕事において、“〇〇会社の舟之川”ではなく、“舟之川がいる〇〇会社”という立ち位置で必要とされたくて」

たとえ業務上の付き合いでも「担当者同士」としてではなく個人で付き合いたい。「役立ち」を感じることが、自分の存在意義になり「次」を拓く原動力となる。その場所を求めて舟之川さんは自由に生き場所を変える。そのためには一緒に働く人も重要なポイントだ。

「自分の仕事が好きな人が良い。お金だけが目的ではなく、お互い刺激し合ってより良いものを生み出そうとする人と働きたいです」

今は何事も楽しむことを大切にしている。現在は育児をしながらの生活のため自由に使える時間が限られている。

「“本当にやりたいことだけをやる”ことに徹しています。本当にしたいことがあったらあらゆる手を尽くしています」

今後も派遣を続けていくかという問いに対しては「わからない」と答える。今は毎日が充実し過ぎているため、今後もこのまま充実をキープもしくはアップさせていきたい。そしてリミットを設定せずに、自分の中になる溢れる気持ちを大切にしていきたいと話す。

「ただ、楽しくてワクワクするのであれば続けていきたい。あとは体のメンテナンスの時間が確保できるだけの時間があれば何でもOKです」

 

 

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座右の品: パウロ・コエーリョアルケミスト』 「どんな気分の時でも読める」

経歴:滋賀県膳所高校大阪外国語大学イタリア語専攻(現・大阪大学国語学部)→映画興行会社→コンサル会社→NPO団体→ハバタク株式会社

生年月日:1976年1月15日 やぎ座 AB型

趣味:最近はジム。「パーソナルトレーニングで姿勢の改善をしています!」

特技:ネコの鳴きマネ(本当にネコが寄ってくる)

好きなスポット:代々木ポニー公園

好きな食べ物:肉

嫌いな食べ物:メロン

好きな言葉:「自分の信じる道を見つけて進んでください」

      高校の美術の先生に言われた言葉。「先生、見つけたよって言いたい」

HP:ブログ Art in Me http://seikof.blog.jp/

 筆者とのつながり:greenzオープンランチ

 

 

(執筆:小野 ヒデコ)

 

<小野ヒデコプロフィール>

おの・ひでこ 1984年生まれ。自動車メーカー、アパレル会社勤務を経て2015年にライターに転身。