「人」という肩書きで生きる

好きな人を取材して、その人の生き様を紹介しています。

No.5 世代を超えて愛されるフットサラー

 

笠井崇史さん(30)の周りには自然と人が集まってくる。大学からフットサルをはじめ、3年次にはキャプテンを務めた。卒業から8年たった今でも現役大学生といっしょにフットサル大会に出場し実績を残している。世代を超えて周りから愛され、何年たっても、チームとのつながりを持ち続けられる理由とは。5/4に開催されたエフチャンネルピヴォチャレンジカップ2015試合後に話を聞いてみた。

 

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ひとりで頑張っていた学生時代

もともと大の負けず嫌いで闘争心も強かった笠井さん。高校でサッカー部の副キャプテンを務めていた時は誰にも頼らずひとりで何でもしていた。「今に比べると、昔はだいぶ尖っていたな。高校サッカー部の時、練習中や試合中は話しかけられないくらい怖い雰囲気を醸し出しているってマネージャーに言われました。自分では全く自覚なかったから、言われたことに対して腹が立ったりもして……」

 

ひとりで頑張ることは大学でフットサルサークルに入ってからも続く。「試合中熱くなりすぎて暴言吐いたり、キレたり結構していました」熱くなるのは勝ち負けにこだわっていたからだろうか。

 

そんな中、フットサルサークルの同級生たちが笠井さんを変えていく。

「ひとりで頑張るなよ」

「笠井が楽しまないと、俺らも楽しくない」

周りは笠井さんの頑張りをちゃんと見ていた。全力で駆け抜ける姿を見ていたからこそ、自然と手を差し伸べたくなったのだろう。

そして、何でも自分でやっていた笠井さんは、サークル運営に関して徐々に周りに役割を振れるようになっていく。「宴会で盛り上げられるやつ、会計きっちりできるやつ、常に冷静でいられるやつ、周りにはすごいやつらがいたことに気づきました」

 

 

言葉の裏にある愛情

大学のフットサルサークルでプレーしだしたことを期に、笠井さんは人を動かすスキルを伸ばしていく。

「人を動かすのってすごく難しい。でも、その場の状況をよく考えます。直接自分が言うのか誰かに言ってもらう方が良いのか、言うタイミングは練習中か練習後かとか。そこは頭使ってます」

そして思ったことはハッキリ相手に伝えて指示を出す。

「誰かに何かを言うことに対して抵抗はないかな。人に何かを言う時って、相手のためにもなるし、全体に関わることもあるからそこはきちんと言う」

 

 

もう一つの理由は、笠井さんの率先垂範にあるのではないかと学生時代同じサークルに所属していた筆者は思う。笠井さんに言われると、いつも素直に動いてしまうのだ。

「自分が人に指示するだけのことをしていると思うからね。逆に、自分の努力が足りなかったら相手に対して何も言えない」

笠井さんは指示を出すだけに見合った行動をしているからこそ、言われた相手も自然と動いてしまうのだろう。その指示の裏には「愛情」がある。「指示を受けた人が動いた結果、チームに貢献できたっていう喜びを感じて欲しいと思う。でもそれは敢えて言わない。自分で気づくことによって人って成長するもんだと思うから」

 

そして、ささいなことでも「ありがとう」「ごめんね」を添えることを忘れないのだ。

「やってもらって当然と思うことはないな」

でも試合中は別。試合ではミスをしないことが前提のため、仮にミスしたとしても謝るのではなくてその分練習してレベルを上げようと思うのだそうだ。笠井さんの中のアスリート魂を垣間見た気がした。

 

相手に対して愛情をもって最適な方法でアプローチしていくこと、そして自ら進んで動いていく姿勢こそが、世代を超えた仲間付き合いをするコツなのかもしれない。

 

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写真:エフチャンネルピヴォチャレンジカップ2015にて

 

チームの中で最年長の笠井さん。学生時代いっしょにプレーしていたのは

この内の半分以下で、中には年齢が一回りも違う現役大学生もいる。

 

 

人の成長に携わるのが好き

大学時代は小学校のサッカースクールのコーチをしていた。「中にはひとりが好きな子がいたり、すぐいじけてしまったりする子もいる。そういう時は他の生徒に声をかけさせるように促します」

笠井さん自身もその少年を直接叱咤激励する。その一方でスクールの生徒同士でチームワークを高めるよう仕向けることを忘れない。「生徒の中で上手く巻き込んでくれそうな子に声をかけて、チームで動くことの大切さを伝えます」それでもひとりになってしまう子がいた場合はどうするのだろうか。

「そういう時は、仲間に入りたがらない本人に注意すると同時に、周りの生徒にも注意します。チームでプレーするスポーツなんでね」

 

面倒見の良い優しいコーチだったと思いきやそうでもなかったらしい。

「よく叱る怖いコーチだったと思います。でも、生徒との距離は一番近かったかな。怒るのはプレーに関してではなく、マナーの方ね。あいさつができなかったり、親御さんや相手選手に対して失礼な態度をとっていたりした生徒に対しては容赦しませんでした」

 

それらはすべて笠井さんが幼少期に両親から習ったことだ。「父親はめっちゃ怖い。今でも怖いんだけどね。礼儀作法は小さいころから徹底的に躾されました。“ただいま”“おかえり”の挨拶は必ず玄関まで行ってするとか、お礼や謝罪はきちんとするなど、基本的なことを小さいころから身に付けさせられました。でも、最近はできてないこともあるんだけどね」と少しバツが悪そうに笑いながら話す。

 

当時教えていた小学生たちは今では大学生に。笠井さんと同じようにサッカーコーチをしている人も中にはいると言う。

「今でも年賀状とかハガキが届くんよ」

顔をほころばせて話していた。こういう事が何よりも嬉しいのだそうだ。

 

人を育てることが好きな笠井さんは、現在の職場でもその能力を発揮している。

「新人の頃は営業数値No.1を目指して頑張っていました。でも今は自分の仕事は最低限にとどめて、その分教える側にまわっているかな。面倒見るのが好きなんよね」

 

周りから教師になったら?と言われることもあるのだとか。

「育てることが好きなんでね。でも、今から教職とって試験受けるだけの気力がない(笑)」

 

これからも笠井さんを中心とした輪は益々広がっていくだろう。公私ともに活躍していく姿が目に浮かぶ。

 

 

 

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現在、GORDO(ゴルド)というチームでフットサルの試合に出ている。GORDOはスペイン語でデブという意味だ。「現役時代65kgくらいだった体重は現在90kgくらい。ピーク時は98kgまでいった(笑)」

フットサルの活躍はもちろん、体重管理も応援していきたい。

 

 

 

【略歴】

座右の品:あだち充の作品。特に好きなのは『タッチ』

生年月日:1984年6月15日生まれ O型 ふたご座

経歴:北大和高校→同志社大学経済学部→製薬会社MR

家族構成:父、母、兄、姉

趣味:フットサル、ゴルフ、猫(るるぽん、グレー)と遊ぶこと

特技:どこでも生きられる(なんでも食べてどこでも寝られる)

お気に入りスポット:自然の中。あとベットの上(食後はいつもここでゴロン)

好きな食べ物:肉! まだ肉!

嫌いな食べ物:昔はトマトがダメだった。今は克服。

好きな言葉:継続は力なり

尊敬する人:家族全員。特に父親。

Twitter URL:同志社フットサルクラブHP  http://dfc.noor.jp/

 筆者とのつながり:大学時代のフットサルサークル

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グレー(手前)るるぽん(奥)

 

(執筆:小野 ヒデコ)

 

<小野ヒデコプロフィール>

おの・ひでこ 1984年生まれ。自動車メーカー、アパレル会社勤務を経て2015年にライターに転身。