「人」という肩書きで生きる

好きな人を取材して、その人の生き様を紹介しています。

No.1 「人の体」を通して心もケアしていくプ女子

ピラティス」をご存じだろうか。ヨガと同じように主に女性の間で人気が出のあるエクササイズのことで、筋力・バランス強化に加え体幹やインナーマッスルを鍛えることができるため、近年ではリハビリテーションの目的としても行われている。そんなピラティスのインストラクターとして活躍している葛西むつ美さん(36)。スポーツインストラクターとして勤めていた会社を退職し独立した。ピラティス1本のフリーランスとして活動するようになってから4年が経った今、彼女はどのような気持ちで仕事とそして生徒と向き合っているのだろうか。

 

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人の体を扱うということ

葛西さんはグループレッスンとパーソナル(個人)レッスンと両方行っている。生徒は下は20代から上は60代まで幅広い年齢の方がいる。「“レッスンは“健康”になることを目的として行っているものであり、それをフォローするのが私の役目。」続けて彼女は言う。「面白いんだけどね、20~30代前半の人は健康に無頓着なんです。まだ体の自由が利くから、『動けなくなる』という感覚が想像つかない。でも、それが40代になると、体のどこかしらに『ガタ』がくるんです。そうするとおのずと健康や自分の体に関心を持つようになるんですよ。」

 

運動は健康に良いイメージだが、方法を間違えればマイナスの効果があることを忘れがちである。ピラティスとは負荷を自分で調節できるトレーニング。だからこそ、来ている生徒一人ひとりの状態や心情を観察することが必要になってくるのだ。「人の体」を扱うこと。それがインストラクターとしての葛西さんの真髄。心技一体という言葉があるように、心と体は引き離せないものだ。「その人の体を通して、心の気づき、心のケアも一緒にしていきたいんです。」これが彼女のインストラクターを続けている理由だ。

 

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ある生徒さんとの出会い 

グループトレーニングには色々な人が来る。ある生徒は、指導した内容を理解せず、ただ参加をしに来ているだけだった。「当初は、それにものすごく腹が立ってね。なんで動いてくれないのか?何しにきたの?そんな風にばっかり思ってて。」ハニカミながら話す彼女は、当時のことを振り返りながら語る。「それでも生徒さんなのだから、目をつぶってました。でもストレスが溜まっていって・・・でもね、そんなある日、その方を前にして、“この人はこれでいいんだ”って認められた瞬間があったんです。」人は変えられない。そうであれば、自分が変わるしかない。それを実体験として学んだ瞬間だった。

 

それ以降、その方とも上手くコミュニケーションがとれるようになったそうだ。「不思議です。相手は何も変わってないのに、自分の見方を変えるだけでこんなにも楽になるんだって思いました。」人を変えることはできないかもしれない。そうだとしたら、自分が少し見方を変えたり、立ち位置をずらしたりすることが大事なのかもしれない。「頭でわかっていても、心に落ちてくるまで時間がかかる。そして実際に行動に移せるようになってはじめて楽になるんですね。」

 

「自分自身」が商品

フリーになった時のことを聞いてみた。一言、「楽しい」という答えが返ってきた。「でも、フリーだからこそ誰かと関わっていく必要性を感じます。組織にいれば、放っておいても人の繋がりはタテヨコとできていくけれどフリーではそれが全くなくなるから。」身一つになった時、自らつながりを築き上げていく必要が出てくる。

「でも当初は気を付けないとレッスンを詰め過ぎてしまって・・・レッスンの本数が直接給料に反映するからやり過ぎてしまっていた時もあったなぁ」そう客観的に見られるのは、現在の葛西さんはその当時とは違い、余裕をもって仕事をしているということだ。最近では、同業種交流会をはじめ、異業種交流会にも参加し始めた。色々なつながりができて面白いという。「自分が商品。だからこそ積極的に売り込んでいかないと。」

 

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「苦しく悩んでいきたい」

生徒たちとの関わり方に、葛西さんは今一番の壁を感じている。「ドクターとインストラクターの違いは、ドクターは診断できるけど、インストラクターはできないということです。」その日その日によって、生徒の雰囲気の違いに気づくのだそうだ。一番わかるのは1週間に1回のペースでレッスンを受けてくれる人。毎日会っていたらおそらく気づかない変化を、1週間という期間を空けると顕著にわかるのだそうだ。前回と同じメニューをしていても、息が上がってしまったり、明らかに体力がなくなってしまったりしている生徒を見るととても心配になる。

 

「インストラクターは医者のように診断はできないけれど、診察へ行くよう促すことはできるから。」ただ、その言い方も難しい。下手に伝えて、生徒を不安にさせてはいけない。どうやって、みずからの意志で病院に行こうと思ってもらえるか・・・先輩インストラクターなどにアドバイスを乞う方法もあるだろうが、彼女は敢えてそれをしない。「自分で考えたいからね。」ベテランの先輩に聞けば早いのかもしれないが、実際にその生徒を良く知っているのは葛西さん自身だ。そこは自分で言葉を選んで伝えていきたいと強い意志のこもった目をして答えた。「ここは苦しく悩んでいきたい。」この壁を乗り越えた時、2倍も3倍も大きく飛躍するのだろう。

 

 

「プ女子」=プロレス好き女子

 

そして、もうひとつ、葛西さんは「プ女子」でもある。「え?プ?」と聞き返してしまったのだが、ご存じの方はいるだろうか?「プロレスファンの女性」のことを「プ女子」というそうだ。葛西さんは20歳の時、総合格闘技と出会い、格闘技を始める。その関連もあってプロレスにも興味があったのかと思いきや、最初は全く関心がなかったそうだ。きっかけはプロレス観戦の招待券をもらったこと。しかもとても良い席で、目の前で行われる圧巻の戦闘にただただのめり込んでしまった。

 

「プロレスは全部シナリオ通りに進んでいくんですよ。それが本当にすごくて!」と熱く語ってくれた葛西さん。今回はお昼に会っていたのだが、ここにお酒が入っていたらもっと熱くプロレス話をしてくれたのだろうと思う。次回はビールを交えて話を聞いてみたいと思った。

 

5年後、10年後の明確なビジョンはまだないけれど、漠然と「こうなりたい」というイメージがある。それは、生徒の中には40代やそれ以上の方も多く、自分の将来を重ねやすいからかもしれない。「近々また格闘技を始めようかな・・・」とつぶやいていた葛西さん。年齢に関係なく、アクティブにポジティブに進んでいく姿に元気づけられる人も多いのだろう。でも、くれぐれもケガには気を付けて欲しい。応援していきたい。

 

 

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武蔵小杉64カフェにて

64Cafe+Ranai - 基本情報 - Google+

 

 

座右の品:吉田松陰『覚悟の磨き方』

「『吉田松陰』を知った本。めくって1ページ目にある“この命をどう使い切るか。ついに志を立てる時が来た。”を読んで鳥肌が立ちました。周りとは一風異なっていた型破りで勇敢な松陰と、人と同じとことをするのがキライ!という思いが重なって感銘を受けました」

家族構成:父、母、姉

趣味:プロレス観戦(プロレスリング・ノア所属の小峠篤司選手が大のお気に入り♡)

お気に入りスポット:多摩川(川)、海

特技:たくさんビールを飲めること!

好きな食べ物:ビール!(アサヒとハートランド押し)

嫌いな食べ物:いくら

好きなタイプ:豪快な人、筋が通っている人。見ていて気持ち良いから!

嫌いなタイプ:細かい人、言っていることが小さい人。

ブログURL:カサイムツミブログ http://ameblo.jp/pilates623/

筆者とのつながり:宣伝会議無料セミナーの帰りで話した10分間

 

(執筆:小野 ヒデコ)

 

<小野ヒデコプロフィール>

おの・ひでこ 1984年生まれ。自動車メーカー、アパレル会社勤務を経て2015年にライターに転身。